私たち
concept縁日がある東北・岩手には
山や川、草木や獣たちと共に生きてきた
何にも変えがたい暮らしがありました。
山の植物の色を借りて染め物をしたり、
馬や牛の力を借りて田畑を耕し、
山の獣の命をいただき食卓を囲む。
綿花が育たない厳しい寒冷の土地柄、
布はとても貴重で、
服は穴が空くたび、何度も自分たちで直し
1着を大切に、大切に着続けます。
自然の恵みに感謝をし、
ものを大切にしてきた土地の暮らしから、
裂織や刺し子、郷土芸能や祭りといった文化が生まれ
今へ受け継がれています。
しかし、時代が激しく移ろい、
私たちの生活が変化してきた中で、
それらを、置いてきぼりにしてきたのかもしれません。
ちょっと立ち止まって、
身の回りの人や物や自然との関係性や距離感を
もう一度、見直す時が来ていると私たちは感じます。
ふと足元を見てみると、一〇〇100年以上ものあいだ
東北の地で営まれてきた暮らしの中に、
未来への道標となる「本質的な豊かさ」があることに
気付きました。
私たちは一〇〇100年先の未来に、
その道標を紡いでいきたい。
先人たちが残してくれた、
東北の暮らしを丁寧に紐解き、
人や自然を繋ぐ、真摯なものづくりをする。
それが未来に繋がると、私たちは信じています。
これまでの一〇〇100年の暮らしを、
これからの一〇〇100年に繋いでいく。
人にも自然にも寄り添う、暮らしの道具を
縁日は作り続けていきます。
郷土
私たちが暮らす岩手県は、四方山に囲まれたいくつもの盆地で形成され、起伏に富んだリアス式海岸があります。冬は寒く、春から夏にかけて吹く冷たく湿ったやませ風で作物も育ちにくく、かつては飢餓も度々起きたとても厳しい土地でした。農作物が採れない時には、山の木の実を糧にする。身体をつくるタンパク源は山の獣の命をいただき食卓を囲む。育てた麻を自ら紡いで布を織り、1着を作る。その1着を何度も繕いながら永く大切に使い続ける。そんな暮らしが、長く山間部の地域で営まれてきました。
山間部の集落で過ごしてきた人々にとって、草木や生き物の命と自らの命は、密接な関係にありました。自然から恩恵を受け、自然と決して争わない。慎ましくも豊かな暮らしがそこにあったのです。
山の恵みに感謝し、自然を恐れ敬うこの土地の精神性は、岩手独自の郷土芸能や祭りの文化を通して、今の時代にも脈々と受け継がれています。
地域の祭りと
京屋のものづくり
岩手の郷土芸能や祭りの根幹には、自然への畏敬の念や命への感謝を今に伝え、よろこびに満ちた暮らしを願い祈る、そういった想いがあります。祭りで着る絆纏は、絆(きずな)を纏う(まとう)と書き、地域や人の想いを繋いでいます。また郷土芸能衣装は、身につけることで山の獣の化身となり、自然と繋がることができる道具です。それぞれの衣装を身につけることで、地域の想いや自然との繋がりを感じ、自分たちが暮らす地域への敬意や郷土愛を示すことでもあります。
京屋染物店は、岩手という地域と繋がり一〇〇100年以上、祭りや郷土芸能の衣装の製作を手掛けてきました。大切な祭りの衣装は、繕いながら代々引き継がれ、地域の愛着が刻まれたかけがえのない1着に変わっていきます。私たちはその1着を職人たちの手によって、丁寧に、丁寧に作り上げてきました。
縁日
「自然の恵みに感謝をし、モノを大切にして生きる」という暮らしの当たり前は、時代が移ろうなかで、すこし置いてきぼりにされているように感じます。人やモノを愛し、自然と寄り添いながら生きることは、今までもこれからも変わることのない暮らしの根っこです。この土地の豊かさを築いてきた、郷土への想いを服づくりに込め、一〇〇100年先の未来へ繋げるブランドとして、京屋染物店は縁日を立ち上げました。祭りの衣装が、地域や人々の想い、自然との繋がりを身につける道具であるように、縁日の服も大切なものに寄り添い、繋がれる暮らしの道具でありたい。駆け抜けてきた時代が置いてきてしまったモノを丁寧に拾い集めながら、縁日は一〇〇100年先の未来に紡いでいきます。