5月5日の端午の節句は、子供の成長の喜びと願いが込めた日本に伝わる節目の行事です。
この頃に盛期を迎える菖蒲(しょうぶ)を様々な形で使う風習があることから、端午の節句は別名『菖蒲の節句』とも呼ばれるほどです。
昔からお家で楽しまれていた日本の風習の一つです。
その中の幾つかをご紹介します。
なぜ菖蒲??子供の日に菖蒲を使う三つの理由。
菖蒲は子供の成長を願う植物として、昔から端午の節句に用いられてきました。
その三つの理由をご紹介します。
【その一】〜菖蒲には強い香気があるから〜
菖蒲は独特の強い匂いがあり、この香気が邪気を払うと昔から言い伝えられてきました。
【その二】〜名前の響きが縁起が良いから〜
菖蒲(しょうぶ)の名前が『尚武(武道や武勇を大切だとする考え)』や『勝負』と通じることから、強くて逞しい大人にへの成長の願いが込められています。
【その三】〜菖蒲の葉が刀に似ているから〜
菖蒲の葉は刀によく似た形をしていて、この刀の形が鬼が嫌がり逃げていくのだそうです。
鬼は菖蒲の他にヨモギも嫌いだということを、祖父や父から昔話を通して教えてもらいました。
菖蒲とヨモギと鬼の話をご紹介します。
昔々、子供が山で鬼に出くわしました。子供は慌てて走って逃げますが、鬼も子供を食べようとドンドン追い掛けてきます。
子供は里まで逃げますが鬼に捕まりそうになり、足がもつれて転んでしまいます。
転んだ先がヨモギが群生している場所で、子供はヨモギの葉に埋もれてしまいました。鬼は「ヨモギの葉」を「炎」と見間違え、驚き慌ててしまいます。
鬼が追い掛けるのを諦めたと思い、子供は立ち上がり走り出します。子供が炎(ヨモギ)の中から出てきた様子を遠くから見ていた鬼が、『待て待てー!!』と、さらに子供を追い掛けます。鬼に追い掛けられていることに気付いた子供は、菖蒲の薮に身を隠します。
子供を捕まえようと鬼が薮に近づきますが、鬼は「菖蒲の葉」を「刀」と間違え『ギャー!!』っと悲鳴をあげて山へと逃げていきました。
子供は、ヨモギの葉(炎)と菖蒲の葉(刀)に守られ、鬼に捕まらずにすみました。
「子供たちが、鬼に捕まってしまわないように、願いを込めて菖蒲とヨモギのお風呂に入るんだよ」
子供の頃、こんな話を聞かされながら、祖父や父と一緒にお風呂に入っていたことを思い出します。
めちゃくちゃラッキーな子供とオッチョコチョイな鬼のユーモラスな一面が、とても可愛いお話ですね。
菖蒲を使った日本の風習
【その一】〜菖蒲湯に入る〜
子供の日の一番ポピュラーな風習と言えば『菖蒲湯(しょうぶゆ)』です。
家族みんなで菖蒲を浮かべた湯船に浸かり、健やかな子供の成長と無病息災を願います。
菖蒲を子供の頭に巻くと、頭が良くなると言われています。
【その二】〜菖蒲枕(しょうぶまくら)〜
枕の下に菖蒲を敷いて、一年の無病息災を願います。
こどもの日の前夜の5月4日の夜に行う風習です。
【その三】〜軒菖蒲(のきしょうぶ)〜
菖蒲を家の軒や窓、玄関などに吊るして邪気を払う風習です。
菖蒲占いという風習もあり、菖蒲を軒先に吊るしながら『思うこと軒のあやめにこと問わん、かなわばかけよささがにの糸』と唱えます。
菖蒲に蜘蛛が巣をはれば願いが叶うと言われています。
菖蒲の意外な効用
菖蒲は験を担ぐ(げんをかつぐ)風習だけではなく、意外な効用が隠されています。
菖蒲にはテンペルという成分が含まれています。
このテンペルは疲労回復、精神安定、鎮静効果がある成分です。
菖蒲湯に溶け出したテンペルは、皮膚や呼吸器から吸収されると健康効果が高まります。
テンペルは菖蒲の茎の方に多く含まれているので、菖蒲を買う際は茎付きのものを選ぶと良いと思います。
昔の人たちは、感覚的に菖蒲湯に入ると元気が出ると知っていたのですね。
今日は子供の日。
家族みんなで子供たちの健やかな成長をお家で願ってくださいね。