今朝はなんだかいつもより暖かい朝を迎えました。
窓を明けてみると、『これぞ岩手の冬!』といった一面の銀世界が広がっています。
雪景色なのに『いつもより暖かい朝』???
都会で暮らしている方々は不思議に思うかもしれませんが、『今日は雪が降ったから暖かいねー』なんて言葉をしばしば岩手では耳にします。
雲一つなく放射冷却で冷え込んだ朝より、一見寒そうな銀世界の方が実際に暖かいから不思議です。
でもでもそこは岩手の冬、やっぱり寒い。
こんな寒い日の岩手の楽しみは『どんぶく』を着て、こたつでぬくぬくと読書(みかんも添えて)に限ります。
en・nichiのデザインやディレクションに携わって頂いている前川さんから、一冊の本を紹介してもらいました。
それが『デザインとは何か?』という本です。
前川さんはこの本を読んで、デザインの本質と自分が目指すべきデザインを見つめることができたと教えてくれました。
髭もじゃの前川さんが少年のように目をキラキラさせながら話すものだから、私も「どれどれそこまで言うのなら」と早速購入して読んでみました。
この『デザインとは何か?』という本は、昭和47年(今から48年前)にフリーデザイナーの秋岡芳夫さんが出版した本です。
秋岡さんは工業デザイナーでありながら大量生産・大量消費社会に疑問を投げかけ「暮らしのためのデザイン」という持論の実践のため、日本各地で手仕事やクラフト産業の育成のために尽力された方です。
読み進めていくうちにどんどん秋岡ワールドに引き込まれていきます。
まさにen・nichiが目指しているものづくりの本質がこの一冊にありました。
47年前の本とは思えない程、今の日本のモノづくりを語っている本でした。きっと新しいとか古いとかという枠ではなく、デザインの本質の話をしているからいつの時代も色褪せないのでしょう。
この本が書かれた昭和47年は、モノがバンバン売れる高度経済成長期のど真ん中。 それはそれは日本中活気に溢れていた時代だったことでしょう。
世の中の製品は消費、消耗が当たり前。企業は工夫を凝らし次々と便利な新商品をつくり続けていました。
価値あるデザインとは、売れるデザイン、消費者に消費してもらうデザインが良いデザインとされていました。
しかしそんな時代の中で秋岡さんは長期的視点に立ち、限りある資源の中をいかにモノを大切にするのか。消費よりも日本人が美徳としてきた『愛用』に今一度目を向けるべきではないかと警鐘を鳴らしていました。
ショーウィンドウに飾られた時が一番価値があって、使い込むほどに価値が目減りするモノって本当に価値あるモノなのでしょうか??
今こそ美しさ、格好良さの価値基準を見直す時に来ています。
難しいことはさておき素直に想うことは、使い手のことをいつもいつも考えている愛すべき職人たちが、手間暇かけてセッセセッセとこしらえたen・nichiの道具たちは、愛着を持って永くお使いいただける方に手に届き、生活の一部として大切に愛用して欲しいという思いただ一つです。
この本を読んで、デザインの本質に触れて、その感動を少年みたいな顔で私に話してくれている髭もじゃの前川さんがen・nichiのデザインやディレクションに携わってくれていることが本当に嬉しくも心強く感じました。
こんなことを考えていた今年最初の雪の日。
冬の岩手も悪くないですね。
筆:en・nichi企画運営 蜂谷淳平