山ノ頂 価格改定のお知らせ

2023.06.02

岩手で害獣駆除された鹿の命を価値に変え、利活用していくプロジェクトとして昨年からスタートした『山ノ頂』プロジェクト。

年間、約3万頭近い鹿が岩手で駆除されており、その9割以上が廃棄されている現状です。

駆除された鹿の全ての利活用は、現実的にまだまだ課題が多く難しいところがありますが、少しでも獣たちの命に敬意を払い、山の大切な資源として利活用していきたいという思いで、企画から3年、このプロジェクトに心血を注いできました。

前例のないプロジェクトなだけに、手探りの中で一つ一つ課題をクリアして、ようやく安定的に商品を作れる体制が見えてきたところです。

 

企画を進めていく中で、今大きな課題となっているのが価格の壁です。

私たちは身近な山の資源である鹿皮使い、気兼ねなく日常で使いができる道具にしていくコンセプトでものづくりを進めています。

ですが、昨今の流通や材料の値上がりの影響は、少なからず『山ノ頂』にも影響を及ぼしています。

身近で手に取れる価格で鹿革製品を沢山の人に愛用してもらいたいという気持ちと、我々を含めた制作に関わる人が苦しくては続けることができないという葛藤の間で、揺れ動く日々を過ごしています。

 

鹿革は傷が沢山あります。 オス同士で喧嘩をしたり、藪で傷ついたり虫に刺されたりと、自然で逞しく生きた証が皮には沢山ついています。

皮の傷も野生で生きた一頭一頭の価値あるストーリーとして、山ノ頂では積極的に活用しているのですが、機能的にも見た目としても、あまりにもクオリティが下がる傷に関しては、検品で弾いており、使う面積はそれほど大きくはありません。手間がかかる上に、使用面積が少ないことで、そもそも革一枚あたりのコストは決して安いものではありません。

野生の鹿なので、『ただ』ので手に入るように感じるかもしれませんが、飼育された牛や豚の方が、一度の処理で使える革の面積が大きく、かつ傷も少ないので効率的に革を取ることができるため価格を抑えることができるのです。

猟友会の方々が鹿の皮を手で剥ぐ作業も重労働で、大きなものでは100kgを超える鹿を吊し上げ、皮を剥いでいきます。

山ノ頂の皮を提供して下さっている岩手県遠野市の猟友会の方の作業場は野外で、夏は炎天下、冬は0℃を下回る環境での過酷な現場です。

70歳を越えた方々が今でも現役で携わっているのですが、健康面ももちろんのこと、今後の後継者の問題も大きな課題となっています。

鹿から剥ぎ取った皮には、肉や脂がついており、そのままの状態では皮を革にするための鞣工程に移すことができません。

遠野の鹿革を取りまとめて革の提供をお願いしている『しかとくまや』の山田泰平くんが、剥ぎ取った鹿皮についている肉片や脂を高圧洗浄機で除去する工程を担っています。

この工程も、屋外での重労働で、夏はダニ刺されないように合羽を着込んで汗ダクになりながらの作業で、冬は高圧洗浄機から飛び散る水が体に付き凍りつくような現場での作業です。

泰平くんは、岩手の豊かな自然とそこに暮らす人の逞しさと自然との距離感に魅力を感じ、神奈川から移住してきました。

少し歪になってしまった山と人との距離感をもう一度『丁度良く』していきたいという想い一つで地道に皮から革への受け渡しを遠野で続けています。

泰平くんが、これからも山と人の間に立って活動していくためにも、もっと十分な経済循環を作っていく必要があると感じています。

また地域の縫製業に関しても、素晴らしい技術を持っているにも関わらず、安い縫製賃金での下請け仕事が常態化し、経営悪化や担い手不足から、廃業をする会社が岩手にも多くあります。

そのような状況も打破したいという思いで、山ノ頂の商品制作の際には、縫製会社の強みを活かしながらスムーズな製造フロー作れる商品になっているのかも、私たちも実際に現場に足を運び相談しながら企画を進めていきます。

縫製代金に関しても、先方が請け負って嬉しい価格(無理なく続けていける価格)を相談して、製作費を組んでいきます。

縫製業界も重労働、低賃金から担い手が不足している現状が身近で起きています。

 

運賃や鞣加工のコストに関しても値上がりする一方の中、『日常で気兼ねなく使う道具』としての価格設定が、原皮調達や販売を担う私たちの大きな負担に繋がり、自らの首を締め始めているのが、山ノ頂の等身大の現状です。

山ノ頂の商品は、もともと決して安価な商品ではありません。

日常の暮らしの道具として使うには、高いと感じる方も少なくないのかもしれません。

しかし鹿革は丈夫で長く使い続けられ、お手入れするたびに高まっていく味わいと愛着が、値段以上の価値に育っていく道具です。

日常でも使いやすいシンプルな形で、毎日手にとって気兼ねなく使えるデザインにこだわり制作しています。

購入時点のコスパではなく、長い時間軸のコスパを考えたモノづくりにも拘っています。

制作コストに関しても、製造に関わる方々で不当な利益を得ている方は誰一人としていませんし、むしろ関わる方がもっと収益が上がる仕組みを作っていかなくては、『続ける』ことができないと感じています。

原皮調達に携わる方も、十分な収益があれば後継者が見つかるかもしれませんし、労働環境も少しずつでも改善されていくかもしれません。

山田くんも、積極的に活動できる状況がもっと生まれれば、山の資源の利活用の糸口がもっと広がっていくはずです。

縫製業界にも面白く、収益の高い仕事が増えれば担い手も増えていく状況も生まれてくるはずです。

鹿皮をもっと活用すれば、害獣の問題も改善の方向に進む一つのきっかけが作れると信じています。

現場の最前線に立たれている方々が、心地よく続けて行けることが、人と自然の丁度良い距離感を作ることに直結しています。

それにはやはり、お金の巡りを現場の最前線まで巡らせていく必要があります。

プロジェクトを企画し販売する立場として、『関わる人、全てが幸せになるプロジェクトにする』と決めて、山ノ頂をスタートしました。

それは、採る人、作る人、販売する人、買う人、全てです。

山ノ頂の売り上げ3%についても、地域の郷土芸能の支援金に充てさせていただいております。

今更ながらに、大きな大きな頂だなと痛感しているのですが、その思いは揺らぐことはありません。

そのためにも使って良い商品をこれからも作り、磨いていく必要があります。

コストを抑えるための工夫や、流通の仕組みも整えていく必要もあります。

販売価格だけの購買動機ではなく、使い続けていく先に高まる価値や、商品を購入したお金の巡り方についても、山ノ頂を販売する立場としてもっと伝えていくことが、自然と人の関係を繋ぐ私たちの役目です。

 

価格改定について言い訳じみた文章になっていたかと思いますが、これが私たちの正直な胸の内です。

最後までお目を通していただきありがとうございます。

これからも背伸びをせず、等身大を見つめて『より良く』を一歩ずつ登っていきたいと思います。

今後少しお値段が上がります。パッケージも少し簡素になります。

これからもっと永く皆さんに愛される商品として、商品のクオリティーや流通の仕組みも見直しより良い事業に育てていきますので、これからもどうぞ山ノ頂ご愛顧いただきますと嬉しいです。

引き続きどうぞ宜しくお願いします。

 

山ノ頂
企画販売 蜂谷淳平

 

価格改定の時期と、改定後の価格は下記の通りです。

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■価格改定時期
2023年6月19日(月)午前10時より
 
■改定後の価格
・KOMONO-IRE 6,050円(税込)
・HOGUCHI-IRE 10,450円(税込)
・TESAGE 33,000円(税込)
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尚、パッケージにつきましては、簡易包装に変更になります。

従来の箱入れは、ギフトラッピングとして別途料金385円(税込)で対応させていただきます。

 

 

 

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