古代東北の民族「エミシ」を学び、地域を見つめる。

2022.05.20

「蝦夷(えみし)」という言葉を聞いたことはありますか?

 

古代日本の歴史に出てくる、北陸地方から東北地方にかけて住んでいた民族のことを言います。多くの人は学生時代の歴史の授業などで聞いたことあるかもしれません。私たちが住んでいる岩手県は蝦夷の歴史が深く刻まれている土地です。今回は土地に深く残る「蝦夷」についてのおはなしです。

 

 

IWATE THE LAST FRONTIERが主催する蝦夷を考えるスタディツアーが6月にあるのですが、ご縁ありその下見にen・nichiのスタッフも参加させていただきました。

蝦夷と深い関わりを持つ場所に訪れ、その歴史を学んでいきます。

 

最初に訪れたところは岩手県北上市にある、国見山大悲閣展望台。ここは約1時間の登山をしてたどり着くところです。初夏の草花が生い茂る山の中を進んでいきます。

展望台への道中、「胎内くぐり」と言われる、自然にできた大きな岩と岩の間を進む道など、普段の生活では体感できないような場所をずんずんと進みます。

展望台にたどり着くと、北上川を中心とした北上市の全貌が広がります。晴天だと奥羽山脈もはっきりと見える場所ですが、今回は曇りだったため全てを見ることはできませんでした。

大きな川には文明が広がる歴史があるように、蝦夷たちもこの北上川を中心に文化を広げっていったのでしょうか。また私たちが登ってきたこの山にも、岩陰に身をひそめ、歴史から逃れようとした蝦夷たちがいたのか。そんな思いを馳せながら、ただ黙々と北上の土地を眺める時間が過ぎていきます。

今回のツアーではYAMASHIRTをはじめ、sashikoSAPPAKAMAなどen・nichiのアイテムを身につけてくださる方々もいらっしゃいました。

 

 

展望台を後にし、次に向かったのは水沢市埋蔵文化財調査センターに訪れました。

ここには蝦夷の文化をはじめ、平安時代に活躍した征夷大将軍、坂上田村麻呂と、蝦夷の指導者アテルイとの歴史も展示されています。

 

蝦夷は文字を残す文化がなかったため、未だに謎に包まれている部分もあります。しかし、日本書紀の記述や和歌に残っている詩をたどると、男女ともに髪の毛を束ねていたことや、全身に刺青があったこと、山で暮らすために特化した身体能力を持っていたことなど、歴史の様々な部分から蝦夷の片鱗を感じます。また当時の衣食住や信仰に使用されたといわれる出土品も展示されており、言葉では残っていませんが、形として残っているものから、蝦夷の暮らしを知ることができました。

蝦夷を学ぶ上で、朝廷による蝦夷征伐の歴史は切っても切り離せません。ここで少し蝦夷の歴史をお話しさせていただきます。

 

大和朝廷の時代の東北地方(陸奥国)は、軍事に必要な馬や鉄を保有するほか、金などの貴重な資源も採掘される土地でした。様々な権力者たちは東北地方を支配しようと、蝦夷の征伐に軍を進めました。

 

蝦夷征伐の戦いは大和朝廷の時代から何度も行われてきましたが、奈良時代に入ると、戦いの激しさが増していきます。現奥州市水沢地区のあたりで繰り広げられた「巣伏村(すぷせむら)の戦い」では、紀古佐美(きのこさみ)率いる朝廷軍と、アテルイ率いる蝦夷軍が戦い、朝廷軍が大敗しました。この戦いは「清水寺縁起絵巻」に描かれています。これをきっかけに蝦夷征伐の歴史も激しさを増していきます。

 

平安時代になり、征夷大将軍になった坂上田村麻呂が蝦夷の征伐に向かいます。しかし、アテルイは度重なる戦により疲弊していた蝦夷のいく末を憂い、朝廷軍に降伏。それから東北地方は朝廷の支配の時代へと突入します。

 

朝廷軍に降伏後、蝦夷を監視するために建てられた軍事拠点である胆沢城は、今もなお胆沢城跡として蝦夷征伐の歴史を私たちに伝えてくれています。

 

学生の頃に教科書で教わった歴史ですが、改めて岩手の土地で暮らす者として、史実を見つめると様々な想いが湧いてきます。一瞬では咀嚼できない「何か」がそこにはありました。

様々な思いを抱いて、この日の最終地点へ向かいます。

この日の最終地は平泉町にある達谷窟毘沙門堂です。

 

平泉町といえば、世界遺産に登録されている中尊寺金色堂が有名ですね。奥州藤原氏の歴史が色濃い土地です。藤原氏が様々な寺院を建てる前から建立されていたのが、達谷窟毘沙門堂。ここは坂上田村麻呂が蝦夷の族、悪路王を征伐し、建立した寺院と言われています。

こちらの寺院も胆沢城と同じくらい、蝦夷と田村麻呂と深い関係を持つ場所です。胆沢城もこの場所も、当時の蝦夷の目にはどのように映っていたのか。ゆっくりじっくりと、思いを馳せる時間が流れます。

 

今回参加させていただいた、蝦夷をめぐるスタディツアーは岩手でものづくりをする私たちにとっても、深く知りえなかった史実や事実をまのあたりにしました。人によっては思いがけない感情や葛藤が生まれたかもしれません。

 

私たちのものづくりにおいて、地域を学び、湧いてくる思いに蓋をせず、地域と向き合い続けることはとっても大切なことです。これからも私たちの愛するこの土地を学び続けたいと再確認できるような1日でした。

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